高校 2018.03.03
平成29年度第57回卒業証書授与式 式辞

第57期四〇四名の卒業生のみなさん、卒業まことにおめでとうございます。
教職員を代表しまして、皆さんの卒業を心より祝福します。

本日は学校法人熊本学園より、理事長の目黒純一様、学長の幸田亮一様、奨学会会長の岩松一成様、そして紫紺会会長の榎主税様をはじめ、多数のご来賓においでいただき、このように盛大な中にも厳粛に卒業の祝典を挙行できますことは私ども教職員にとりましてもまことに喜ばしいことでございます。

卒業生の皆さん、皆さんはこの住み慣れた学舎から新たな世界へ向けて今まさに旅立ちの時を迎えています。振り返ってみますと、本校での皆さんの生活は大分県中津江村での入学前スプリングキャンプから始まりました。学校からキャンプ地まで、バスでの移動の間、周囲は見知らぬ仲間ばかりで緊張もあったせいでしょう。車内は静まりかえっていたことを覚えていますか。けれども、わずか二泊三日とはいえ共同生活をしながら、同じ釜の飯を食うことで皆さんはたちまちうちとけ、学校に戻ってきた時には、もうすでにお互い長年の友のようににこやかな表情を浮かべていたことを私は今でもよく覚えています。それからあっという間の三年間。今私は心身共にたくましく成長した皆さんを目の前にしてまことに感無量です。
この三年間をかえり見て、今皆さんの心中に去来するものはいったい何でしょうか。部活動での活躍でしょうか。紫紺祭や紫雲祭などの学校行事に一所懸命打ち込んだことでしょうか。それとも日々の学習での努力の積み重ねでしょうか。それが何であれ、皆さんは自らの夢を実現すべくひたすら頑張ってこられたのではないでしょうか。皆さんのその努力、その果敢な挑戦に対して私は心から敬意を表します。とはいえ、皆さん全てが順風満帆に納得のいく三年間を過ごせたかと言えば必ずしもそうではないと思います。皆さんの中には、持てる力を十分に発揮できずに悔し涙を流したり、挫折感を味わったりした人も少なくないでしょう。そんな皆さんに私が言いたいことは、皆さんが味わった悔しい思いや挫折感は決して無駄ではないと言うことです。むしろこれからの不確実な時代を皆さんが生きていくうえでかけがえのない貴重な糧になるでしょう。挫折を恐れず、リスクを恐れず生きていって欲しいと思います。

ところで卒業生の皆さん、皆さんはカルチャーという言葉はもちろん知っていますね。そしてカルチャーには教養という意味があるということも知っていますね。でもカルチャーという英語はもともとラテン語由来の言葉で田畑を耕す、それから派生して心身を耕すという意味があることを知っていますか。私が今皆さんに何を言おうとしているのか、賢明な皆さんはもう気付いていますね。そうです。「生徒の誓い」についてです。
卒業するにあたって本校教育の使命として位置づけられている「生徒の誓い」を今一度思い浮かべて下さい。「学業に精励し英知を磨く」「情操を陶冶し気品を高める」「心身を鍛練し剛気を養う」とあります。学業に精励し英知を磨くこと、情操を陶冶し気品を高めること、そして心身を鍛練し剛気を養うこと。これらは全て心身を耕す行為でありカルチャーなのです。英知を磨くことなしに気品を高める事は出来ません。気品を高めることなしに剛気を養うことは出来ません。逆もまた真なりです。田畑を耕すことによって初めて農産物が収穫可能になるように、皆さんも自ら心身を耕すことによって初めて教養(カルチャー)を身に付けることが出来ます。教養とは自らが自らの力で心身を耕すことによって初めて身に付けることが出来るものなのです。卒業生の皆さん、皆さんがこれからもしっかりと「生徒の誓い」を実践していけば、皆さんは必ずや教養を身に付けることが出来るでしょう。言いかれば、教養を身につけるには、これからも皆さんは「生徒の誓い」を誠実に実践していかなければならないということです。確かな教養を身につけることこそが自らの人生を切り開き、豊かなものにすることを可能にします。また「生徒の誓い」にある民主的文化的な国家社会の卓抜な指導者になるための必要な条件でもあります。卒業生の皆さん、どうか「生徒の誓い」を改めて胸に刻んで旅立って下さい。皆さん一人ひとりのこれからの人生が幸多からんことを心から祈っています。最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業誠におめでとうございます。本日無事に卒業式を迎えることが出来ましたのも、ひとえに皆様方のご支援とご協力の賜でございます。心よりお礼申し上げます。また、大変お忙しい中、お出でいただきましたご来賓の皆様に対し、厚くお礼申し上げまして私の式辞と致します。

平成三〇年三月三日
熊本学園大学付属高等学校 校長 木下 隆雄