高校 2019.03.03
第58期生卒業証書授与式学校長式辞

                                      式    辞

 熊本学園大学付属高等学校 第58期生の皆さん、卒業まことにおめでとうございます。教職員を代表して皆さんの卒業を心より祝福いたします。
本日は学校法人熊本学園より、理事長の目黒純一先生、学長の幸田亮一先生、奨学会会長の古閑正一様、同窓会紫紺会会長の長野英子様、そして前校長の木下隆雄先生をはじめ、たくさんのご来賓においでいただき、このように盛大かつ厳粛に卒業の祝典を挙行できますことは、私どもにとりましてこの上なく喜ばしいことであります。
卒業生の皆さん、皆さんは今まさにこの学舎を旅立とうとしています。思えば本校での生活は大分県中津江での入学前スプリングキャンプから始まりました。そして入学式からわずか4日後からの熊本地震。私たちが今卒業式を挙行しているまさにこの体育館の天井が崩落するなど、誰が想像したことでしょう。学園全体でも甚大な被害ではありましたが、保護者の皆様、紫紺会の皆様、そして地域の皆様など様々な方々のご支援のもと、地域の中でもいち早く体育館は使えるようになりました。私も、機会あるごとに講話の中でみなさんが今、学校生活を楽しく送れているのは、自分だけの力では無い、周囲の大勢の方々のご支援のおかげだということを重ねてお伝えしてきました。また、一方でこの災害の中でも、みなさん同士が助け合い、それぞれの地域の中で高校生ボランティアとして立ち上がったことが、学校に感謝のお言葉を多数いただいたことでも、うかがい知ることができました。学校法人熊本学園の建学の精神は「自由闊達」「師弟同行」「全学一家」であります。七十数年前の大学創設当時、教員と生徒たちが一緒になって校舎建設やグラウンド整備をした、その精神が長い年月を経て、地震という災害の中で再び湧き上がってきたのです。あれから三年、皆さんは本当にたくましくなりました。今皆さんの記憶に最も鮮烈に残っているものは何でしょうか。学業、部活動、そして紫雲祭や紫紺祭といった学校行事など、皆さんの得意とする分野で大いに活躍されたことと思います。私も赴任してわずか1年ではありましたが、皆さんとともに、楽しい行事にたくさん参加し、元気をもらいました。そういった日々の学習、部活動、あるいはさまざまな学校行事、それが何であれ、皆さんの努力に対して、果敢な挑戦に対して私は心から敬意を表したいと思います。とはいえ、楽しいこと、愉快なことだけではなかったはずです。皆さんの中には、十分には燃焼できなくて悔しい思いをしたり、思うような結果が出せず、挫折感を味わい、人知れず涙を流した人もいるでしょう。しかし、私には分かります。皆さんがそういう挫折や悩みの中から力強く立ち上がることを。そして、いつか大きく羽ばたく日がくることを。皆さんが経験した挫折感や、流した涙は決して無駄ではありません。むしろ、皆さんのこれからの人生においてかけがえのない財産になると私は確信いたします。
私の尊敬するアップル社の創立者スティーブ・ジョブズは、20代ですでに時代の寵児、カリスマでした。しかし満を辞して発売したパソコンであるマックの売り上げが伸びず、経営強化のために、みずからがスカウトして来たジョン・スカリーと対立し、自分で作った会社を追い出されるという屈辱を味わいながらも、12年の時を経て、カムバックしました。その間の屈辱感、挫折感はいかほどだったでしょう。その後、倒産も噂されていたアップル社を立て直し、iPhone やiPadなどで大成功を収めたことは、みなさんも良く知っているでしょう。人は必ずしも成功には学びません。むしろ人は失敗や挫折にこそ多くを学び、たくましくなっていくのです。みなさんも、どうかこれからも失敗を恐れず、挫折を恐れず自らの信じた道を自らの力を信じて歩んでいってください。
 さて、本年4月で平成の時代は終わり、新しい時代が始まります。その新しい時代をたくましく切り拓いていくためにも、ぜひガクフの3年間で叩き込まれたであろう、「生徒の誓い」を忘れないでください。
「学業に精励し英知を磨く」「情操を陶冶(とうや)し気品を高める」「心身を鍛錬し剛気を養う」。これは昭和38年に当時の教職員と生徒たちが一緒に作ったものです。ここには本校を立派な学校にしていくんだという教職員や生徒たちの強い決意が示されています。

皆さんの進む道はそれぞれですが、不正解の道などありません。選んだ道それぞれが正解の道だったと自信を持って言えるように、どうかこれからもたゆまず学業に精励し、英知を磨き、剛気を養い、将来、気品を備えた立派なリーダーとして困難な問題に立ち向かい、社会に貢献できるよう一所懸命精進してほしいと願っています。皆さんの健闘を心から祈ります。

最後になりましたが、保護者の皆様、お子様の卒業まことにおめでとうございます。熊本地震に始まり、本当にご苦労の多い3年間であったことと思います。本日無事に卒業式を迎えることができました。ひとえに皆様方のご支援とご協力の賜物でございます。心よりお礼を申し上げます。また本日は大変お忙しい中、おいでいただきましたご来賓の皆様、そして紫紺会の皆様に対し、心より感謝申し上げて私の式辞といたします。


                                                              平成三十一年三月三日
                                                          熊本学園大学付属高等学校
                                                                        校長 堤 豊